オリビアの指輪

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帝国暦231年、ある小国のお姫様は悩んでいた。迫り来る15の誕生日は彼女が妃となる日。 隣国の王子との結婚の準備は国を挙げて騒がしく執り行われている。 城下町は10年に1度あるかないかの大行事に、町全体が活気付いていた。 窓から顔を出し眼下を望む姫君…

第2話「いじめ」

吾潟己依がいじめを受けはじめたのは、思春期特有の少女の葛藤がきっかけだったと言えるだろう。同年代の中では大きく膨らんだ胸、それをクラス内の男子達が表立って囃し立て始めた時から、桂凛子の己依を見る目が変わった。これまで凛子はその端整で可愛ら…

第1話「あがたみよのかくせい」

北陸の寂れた寒村に住む吾潟己依が"その力"に気づいた時は、彼女の心は既に荒廃しきった不毛の大地と化していた。それにも関わらず、状況を変えるべく力を行使しはじめた彼女は底知れない強さを持つ少女であると言えるだろう。もしくは自棄的な思惑があった…

残滓は集まり物語へと

断片的な記憶の在り処。 拙い文字で刻むあの夏の面影。 風が告げるは蒼し夏の音。